頭寒足熱は世界が注目している
私たちは、心臓がある上半身の体温が高く、下半身は低くなっています。上半身と下半身の体温の差を小さくし、血液や体液、生命エネルギーであるき気を巡らせるために、頭を冷やして脚を温めるのが、頭寒足熱です。18世紀のオランダの名医・ブールハーフは「頭を冷やし、脚を温かくし、体を窮屈にするな。そうすれば、おまえはすべての医者をあざ笑うことができるだろう」という名言を残しています。頭寒足熱は、洋の東西を問わず、健康の基本であることがわかります。
現代人は、脚(下半身)の冷えている人が、非常にふえています。特に女性は、下半身が冷え、頭がのぼせる、「頭熟足寒」の人が多く見受けられます。
そのうえ、冷たい水やビールを飲んだり、入浴はシャワーだけで済ませたりするのも、体を冷やす大きな原因となります。
まず、服装や生活習慣を改め、体に冷えを取り込まないことが大切です。おふろに入る、湯たんぽを使う、靴下の重ねばきをするなど、外から体を温めるのも効果的でしょう。
しかし、最も重要なのは、自分の体で熟を生み出すことです。血液の循環をよくして、血流によって体を温めること。これに勝るものはありません。
脚を温めたら難病が改善する例は多数ある
ここでも、やはり、脚、特にふくらはぎの筋肉を使う運動が効果的です。できるだけ歩くように言われるのはこうした理由もあります。バス停1つ分歩くとか、エレベータではなく階段を使うとか、その程度でもいいのです。
ところが、ここで盲点となるのが、はき物です。
ベルトのないサンダル(ミュール)など、足に固定されないはき物は、ずるずる引きずる歩き方になり、足首が動きません。また、ロングブーツは足首からひざ下まで固定されるため、やはり、足首が動かないのです。
足首が動かなければ、「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉( ヒラメ筋)によるポンプ作用が働きません。これでは、いくら歩いても血液循環はよくならず、体は温まりません。
また、つま先の細くなったパンプスなども、足の指がくつついて固定されるため、歩くときに指を使えません。足先の血流が滞ったままになり、血液の循環が悪くなるのです。
最近は、男性でも下半身が冷えている人がふえています。これは、脂質や糖質のとりすぎ、運動不足といった生活習慣の乱れから動脈硬化が起こり、末端まで血液が流れにくくなつていることが考えられます。
ストレスの影響もあるでしょう。ストレスが多いと交感神経が過度に緊張した状態になり、血管が収縮します。そうして血流不全が起こると、心臓から最も遠い、脚が冷えるのです。
つまり、脚の冷えは末端の血流不全です。細胞は、血液が届いて初めて機能ます。血流不全が起こると、細胞活動が低下し、あらゆる病気へとつながります。
頭痛、ひざ痛、股関節痛などはもちろん、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、すべて動脈硬化による血流不全がかかわっています。ひいては、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気を引き起こします。
女性の場合は、子宮という血液を多く必要とする臓器を持つため、血流不全は深刻な問題です。生理不順や生理痛、不妊、更年期障害といった婦人科系の不調が起こってきます。
下半身が冷えて頭がのぼせると不眠にもなり、ホルモン分泌がますます乱れる悪循環に陥るのです。
さらに進行して、全身の血流まで悪くなると、低体温になります。人問の免疫力は、体温が下がると低下します。
「体が冷えると風邪をひく」「脚は冷やすと膀胱炎になる」というのは、非常にわかりやすい例です。これは、低体温になって菌に感染しやすくなることを示しています。
内臓も同じです。血流が悪く、低体温になっている部位は、病気を呼び込みます。ガンやアレルギーなど、一見、冷えと無関係に見える病気も、低体温が原因といわれます。実際、脚を温めて体温を上げることで、難治の病気が改善した例は、枚挙にいとまがありません。
このように、脚の冷えは健康かなめのバロメーターであり、要でもあります。
脚を温める方法はいろいろあります。まずは、体を冷やす生活習慣を正し、脚を動かし、ふくらはぎのポンプ作用を働かせましょう。5本指靴下をはいて足指を動かしやすくしたり、デスクワーク中に足首を動かしたり、工夫はできます。
意外と盲点になっていますが、足裏を温めるのもおすすめです。